わかりにくい精米と精白の高低の関係

  • 2011.12.11 Sunday
  • 16:18



先日、発売された雑誌「食楽」1月号に「燗上がりする日本酒」の特集記事が組まれ、“ぬる燗にして美味い純米酒ベスト20を発表!”として「燗上がりする日本酒」番付が掲載されている。その第2位「大関」クラスとしてランクしている精米歩合80%の純米酒の特徴を「低精白で米のうま味をたっぷり残した食中酒」と表現しているが、これは、精白と精米の高低の意味を間違えた表現であり、素直に「低精米で米のうま味をたっぷり残した食中酒」と書くべきである。

  

歴史的には、昭和34年のメートル法施行に伴い、酒造用語の整備が行われ、酒造業界においては、米を磨く度合いについては精米歩合で表わすことに変ったのである。それまでは、精米歩合という言葉は酒造業界には無く、精白度という表現をしてきたことから、昭和34年以前は、高精白という言葉の意味は、現在使われている高精米と同じだった可能性もあると考えられるが、昭和34年以降、精米歩合表示に統一するという整備が行われたにもかかわらず、50年以上経った今でも混乱が生じており、未だに精米と精白の高低の関係を間違えて使っている人が多い。メートル法施行後、精米とは、玄米を磨いて残った白米のことを示し、その割合のことを精米歩合と称し、精米歩合は、白米の重量を玄米の重量で割り、100を掛けて%で表わしたものと定義され、一方、精白とは、玄米を磨いて削り取った糠のことを示し、その割合のことを精白歩合と称し、精白歩合は、糠の重量を玄米の重量で割り、100を掛けて%で表わしたものと定義されたのである。例えば、精米歩合30%の高精米な酒とは、米が30%で糠が70%という意味であり、精白歩合で示せば70%になり、低精白と表現する。従って、前述の精米歩合80%の低精米純米酒は、米が80%で糠が20%という意味であり、精白歩合で示せば20%になり、表現としては高精白となる。つまり、精米歩合と精白歩合は、それぞれの数値の大小が逆になっており、両方足せば100になり、50%の場合のみ精米歩合と精白歩合は同じになるが、ややこしいことに、精米と精白という言葉は意味が同じで、辞書には「米を磨いて白くすること」、「穀物をついて表皮をとり白くすること」等と書かれている。ところが、酒造用語では、その両方に高もしくは低という文字が加わると全く正反対の意味になる。高精米とは、高度な精米を意味し精米歩合の数値が小さい(49%以下)ことを言い、低精米とは、米の磨きが悪い精米を意味し精米歩合の数値が大きい(51%以上)ことを言う。高精白及び低精白は、その逆で、精米と精白の高低の関係は、高精米=低精白、低精米=高精白となる。つまり、精米の高低は、精米歩合の数値の高低と逆になっており、精白の高低も、精白歩合の数値の高低と逆なのである。これを、精白歩合の数値の高低と同じであると解釈すると、前述のように精米歩合80%=精白歩合20%の酒を低精白(正しくは高精白)だと間違えて表現してしまうのである。

こうした間違いは、出版物だけではなく、ネット上でも多く見られる。例えば、ある酒販店が自店のホームページに「山田錦を35%まで高精白して醸した最高級の大吟醸酒」という表現で取扱酒を紹介している場合があるが、これは、精米歩合で表わせば65%の大吟醸酒だという意味になり、そんな大吟醸酒は、有り得ない。酒税法の分類では、最高級ではなく、ランクの低い本醸造酒になる。全く精米と精白の高低の意味を理解していない例だが、酒販店がこれでは話しにならない。日本国内における玄米及び精米の品質表示について定めた「玄米及び精米品質表示基準」(平成12年3月31日農林水産省告示第515号)第2条では、「精米」を「玄米の糠層の全部又は一部を取り除いて精白したもの」と定義している。また、精米歩合については、平成元年に国税庁告示第8号の「清酒の製法品質表示基準を定める件」により、「精米歩合とは、白米のその玄米に対する重量の割合をいうものとする」と規定されており、「精米歩合とは逆に、玄米の重量に対する除去された部分の重量の割合を精白歩合と言うこともある」と記されている。酒税法では、日本酒のラベルに精米歩合の表示が義務付けられていることから、日本酒業界では、精白及び精白歩合という言葉はほとんど使用されていないのが現状である。よって、精白の高低という表現は、間違いやすいので使用すべきではない。精米歩合と精白歩合の関係及び精米と精白の高低の関係は、極めて分かりにくいので上の図にその関係を示した。精米歩合及び精白歩合ともに数値の小さい方を高精米及び高精白と称し、数値の大きい方を低精米及び低精白と称する。前述のように、精米と精白の言葉の意味は同じで、共に米を削ることだが、精米の高低は、削った後の白米の重量が少ないものを高精米、白米の重量が多いものを低精米と称する。精白の高低も、削った後の糠の重量が少ないものを高精白、糠の重量が多いものを低精白と称する。それは、高精米歩合=低精白歩合であり、低精米歩合=高精白歩合だからである。酒造業界では、上図の高精白と低精白を入れ替え、下図のように高精米=高精白として解釈する風潮があるが、高精米歩合=低精白歩合であることから、精米と精白の高低は反対語であり、常に両方の高低は逆でなければならない。よって、低精米=低精白及び高精米=高精白と解釈するのは、それに反しており、理論的に整合性が保てず矛盾している。

酒造業界では、メートル法施行に伴う酒造用語の見直し後も、長年、高精白=白を高くする=高度に磨いた白米=高精米というように都合よく解釈してきたのではなかろうか。とすれば、精米歩合と精白歩合の意味が全く同じになり、二つの言葉に分ける必要がなくなる。これについて、ある高名な酒造指導者の先生は、「酒造技術者の中には、技術用語として、数字の大きいものを全て高いと解釈する人がいる」と指摘し、「それが混乱の原因ではないか?」と語っている。また、別の先生は、「精白歩合は、昔の表現方法で、古い杜氏さん達の名残りであり、使用しない方が賢明である。この言葉は、今の酒造技術者にとっては“死語”と言っても過言ではない」と指摘している。精白の高低を上図のように解釈するか、下図のように解釈するかは、見解の相違としか言えない。上図を正しいとする私の説に異論を唱える人がいるとすれば、今は、ほとんど使われない精白の高低に関しては、それぞれが、それぞれの解釈をすれば良いのかも知れない。また、死語に近い言葉の解釈について、どちらが正しく、どちらが間違いかを論ずること自体が不毛且つ非生産的であり、ナンセンスかも知れない。いずれにしても、精白や精白歩合及び精白度という表現は、過去のものであり、日本酒をわかりにくくするだけで、現代の日本酒の世界には必要の無い言葉である。


この図では、低精米=低精白、高精米=高精白となり、理論的に整合性が保てず矛盾している。このように解釈している人が多数いると考えられる。

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